イエス・キリストの宣教の基礎
                          主任司祭 ジョヴァンニ・デリア
 イエス・キリストのお話を聞くために、いつも多くの人が集まってきました。ルカによる福音書(5章1~11節)では、ある時イエス・キリストが水辺に立っておられましたが、人々が多すぎてうまく話すことができませんでした。そこで近くにあった2隻の舟に目をとめ、その舟の持ち主たちに頼んで、舟から話をされました。そのとき、舟にいた人たちはイエス・キリストの話をまったく聞いていませんでした。彼らは漁師で、その日は何も獲れず、生活に困っていたのです。良い言葉を聞く心の余裕などなく、ただ心配ばかりしていました。
 イエス・キリストはそんな彼らの様子に気づき、彼らの問題を具体的に解決するために、「もう一度漁に出てみなさい」と声をかけました。すると、彼らはたくさんの魚を獲ることができました。この出来事を通して漁師たちは、イエス・キリストが本当に神の人であることを悟り、弟子となったのです。
 この話は何度も読んだことがあるかもしれませんが、今日は2つの点を強調したいと思います。
 まず1つ目は、イエス・キリストは聞いている人だけでなく、聞いていない人にも語りかけるということです。簡単に言えば、これは宣教の原則です。教会に来ている人だけでなく、来ていない人にも福音を伝えることが大切です。教会は、来ていない人たちのためにも存在しています。
 もう1つは、イエス・キリストのメッセージは言葉だけではなく、現実に根ざしたものだということです。漁師たちが生活に困っていたように、現代社会にもさまざまな問題で苦しんでいる人がたくさんいます。その問題をすぐに解決できなくても、イエス・キリストのように、まず目を向けることが大切です。教会もまた、少しでも理解を示し、支えとなれたら幸いです。
 イエス・キリストが与える救いは、日常生活から切り離されたものではありません。この2つの点は、この福音の中にあるイエス・キリストの宣教の土台となるものです。私たちも教会として、これを学び、実行できるよう努力していきましょう。
 これからも、私たちの教会が同じ信仰の分かち合いを通して、ますます成長していけるよう祈りましょう。

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